処理可能な年表とその意義
処理可能な年表とその意義
処理可能な年表とは、年表記述の意味をとらえてコンピュータ処理が可能なものを指す。たとえば、次のようなことが可能である:
- 年表中の「年」を単なる文字列ではなく日付型の年として処理することで、過去から現在へ、あるいは現在から過去へと整列の向きを変える。
- 複数の年表をマージして、一つの年表とする。
- 自治体のホームページでは、その地域の歴史が年表として掲載されているのをよく見かける。
- これには、その地域の歴史を共有することで、その地域への一体感を深める狙いがあろう。
- 処理可能な年表は、この効果を高める。
自分史、経歴、自社の製品と:
- 地域の歴史と自分史を
- 技術の歴史と自分の経歴を
- 技術・製品の歴史と自社の製品の歴史を
過去だけじゃない
- キャリアプラン
- 地球温暖化の見通しと引退後の生活
- 将来の見通しやトレンドと自分たちの製品計画をあわせてみる
- ニュースリリース中のイベント告知
- 製品の出荷スケジュール
さらに…
- 第3者から見ると、
- どんな年表を参照しているかで、その人が見える
- 同じ年表を参照してる人たちは、バックグラウンドやビジョンを共有している
- 人と人のつながりが見える
イベント記述とmicroformats principle
イベント記述のデータフォーマット
microformats方式によるhCalendarやhResumeが、上記の意味で処理可能な年表をWebにもたらす、有力な手段ではないか。
なぜなら、従来のWebにおける年表掲載のワークフローを変えずに済む可能性が高いからである。
イベントやスケジュールをコンピュータで処理することは従来から可能であったが、これらを処理するソフトウェアは、Webブラウザほどには一般化していない。すなわち、
- スケジュールソフトは従来から存在している。
- また、iCalendarというデータ形式が規格化され、メジャーなスケジュールソフトは、この形式でスケジュールをインポート/エクスポートすることができる。
それにもかかわらず、たとえば自治体の年表やイベント告知がこれらのフォーマットで公開されるにはいたっていない。
これらとmicroformatsとの違いはmicroformats principleに端的に表現されている。
Microformats principle
Microformatsの原則には次が含まれている:
design for humans first, machines second
- be presentable and parsable
- visible data is much better for humans than invisible metadata
- adapt to current behaviors and usage patterns, e.g. (X)HTML, blogging
- ease of authoring is important
これによれば、Webへ年表やイベントを告知するワークフロー、すなわち担当部署や手順、担当者のITスキルが確立していれば、それを変えることなく、microformatsによる年表やイベント告知が実現する可能性が高い。なぜならば、
- 人が目で見て判断できる年表についてワークフローが確立していて、
- その年表の見かけを崩さなくてよいのであれば、
- この年表に機械処理可能な情報を付加しても、公開作業において人の判断や行動を損なうことはないからである。
- そして、そのような情報付加作業(authoring)が容易であれば、担当者に求められるITスキルにもさほど変更がない。
実際、そのような情報付加作業は容易であろう。すなわち、従来の(X)HTMLエディタがmicroformatsをサポートするのは容易であるし、それを利用者が編集操作するのも容易であると考えられる。microformatsのイベント記述形式であるhCalendarで見てみよう。
hCalendar
hCalendarでは、次のようにイベントを記述し:
<ul class="vevent"> <li class="summary">第58回デジタルドキュメント研究会</li> <li>日 時:<abbr class="dtstart" title="2006-11-30T13:00:00-0900">2006年11月30日(木) 13:00</abbr>- <abbr class="dtend" title="2006-11-30T17:30:00-09:00">17:30</abbr></li> <li>会 場: <span class="location">松下電工株式会社 <span style="font-weight:bold">東京本社</span></span></li> </ul>
次のように表示される:
- 第58回デジタルドキュメント研究会
- 日 時:2006年11月30日(木) 13:00- 17:30
- 会 場: 松下電工株式会社 東京本社
まとめ
- Webで公開されている年表がコンピュータ処理可能になると、Webドキュメント利用の新しいカタチが現れる。
- MicroformatsのhCalendarはこれを実現する可能性が高い。
- 年表が、ここで述べたように処理可能となれば、物事をよりリアルに理解する助けになると期待している。
参考文献・サイト
- [1] Syndy Chronicle
- http://www.ne.jp/asahi/yamahige/green/syndy-chronicle/Readme-ja.html
- [2] Microformats.org
- http://microformats.org
- [3] hCalendar
- http://microformats.org/wiki/hcalendar
- [4] hResume
- http://microformats.org/wiki/hresume
- [5] iCalendar
- Request for Comments: 2445, Internet Calendaring and Scheduling Core Object Specification, November 1998.
- http://www.ietf.org/rfc/rfc2445.txt
- [6] Microformats principle
- http://microformats.org/wiki/microformats#the_microformats_principles